月別: 2018年3月

弊所「無料相談会」において時々相談を受ける内容のご紹介(デザインに関する相談)

弊所では毎月第二・第四日曜日にボランティアとして「無料相談会」を実施しており、多くの方にご活用頂いております。
ご相談内容としては、相談者様が創作されたご発明に関するご相談や、新商品や新店舗を立ち上げるに当たってのネーミングやロゴマークに関する商標のご相談が多いのですが、時々、パッケージ・ロゴマーク・キャラクターなどのデザインに関する相談で来所される方がおられます。

来所される方は、発注者側(パッケージ・ロゴマーク・キャラクターなどのデザインを依頼した側)と、デザイナー側(デザインの依頼を請け負った側)のどちらの立場の方もいらっしゃいますが、相談内容およびその対応として汎用的なものがありますので、今回新着情報としてHPにUPさせて頂こうと思います。

相談内容としては、デザインを変更したい、あるいは変更されたというものになります。具体的には、発注者側の相談内容としては事情があって納品を受けたデザインの一部を変更したい(または変更した)が大丈夫かというものであり、デザイナー側の相談内容としては納品したデザインが発注者によって勝手に変更されたというものになります。

ここでまず問題となるのは、著作者(権利者)が誰であるのかという点です。
著作権法における著作者は著作物を創作した者(著作権法第2条)ですので、原則としては実際に創作活動を行ったデザイナーが著作者(権利者)になります。
なお、発注者がデザインの細部に渡ってデザイナーと何度も協議をして具体的な指示を出した上でデザインが完成しているような場合には、発注者がデザインを創作している者と言えるので発注者が著作者(権利者)になる場合もありますが、非常に稀であると思います(「○○な感じでお願いします」という程度の指示や、デザイナーが持ってきたデザイン案の一部について「ここは○○でお願いします」という程度では創作を行ったことにはなりません)。

次に、著作者がデザイナーである場合には、デザイナー(著作者)には、著作権法において著作権と著作者人格権という2種類の権利が認められることになります。
著作権は、著作物を複製する権利(複製権)や著作物をネットなどにUPする権利(公衆送信権)など、複数の権利(複製権、上演権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻案権、翻訳権、二次的著作物の利用に関する権利)を総称した権利のことを言い、各権利をそれぞれ別個に他人に譲渡することができます。
著作者人格権は、著作物を公表する権利(公表権)、著作者の氏名・ペンネームなどを公表・非公表とする権利(氏名公表権)、著作物(デザイン)の同一性を保持する権利(同一性保持権)の3つの権利を総称した権利のことを言い、他人に譲渡することはできません(亡くなるまでデザイナーが保有します)。

従って、デザインの依頼(発注)または請け負い(受注)の際に著作権および著作者人格権に関する「取り決め」をしていない場合には、発注者側が勝手にデザインの変更をしてしまうと、デザイナー側から著作権侵害の指摘を受けて、最悪の場合、訴訟に発展する可能性があります。

そこで、このようなトラブルを防止するためにも、デザインの依頼(発注)または請け負い(受注)の際には以下のいずれかの手立てを取っておかれることをお勧めします。
①著作権および著作者人格権に関する契約書や覚書などを締結する。
②著作権の譲渡(契約)を行う。
③「デザインの変更を行う場合には、事前にデザイナーに打診し、必要に応じて打合せを行う」ことを文書で確認しておく(変更の承諾を得るという仰々しいものではなく、事前に声掛けを行うことをメールのやり取りなどで確認しておく)。

①は正攻法の手段になります。
②は、発注者側にとっては都合の良いものでありますが、この場合には著作物を翻案する権利(著作権法第27条)と二次的著作物の利用に関する権利(著作権法第28条)も譲渡の対象であることを明確にしておくことが重要となります(著作権法第61条第2項)。

ただ、このような契約書を一から作成することは難しいと思います。
そこで、著作権に関する契約書を簡単に作成することができる手段(文化庁HPの著作権契約書作成支援システム)をご紹介します。

文化庁の著作権HPの
「誰でもできる著作権契約」のバナー(http://www.bunka.go.jp/chosakuken/keiyaku_intro/index.html)から、
「著作権契約書作成支援システム」(http://www.bunka.go.jp/chosakuken/c-system/index.asp)をクリックして頂き、「契約書の作成」の「4.イラストの作成(ポスター・パンフレットなどの作成)」をクリックし、「進む」をクリックします。
次に、入力画面が表示されますので、必要に応じて各欄の記入をします。
ここで、著作権を発注者側に譲渡する場合には、「2. 著作権の帰属」の「はい」を選択し、さらに「二次的著作物を作る権利」についても「はい」を選択します。
全ての入力の完了後に「入力確認」をクリックすると契約書を簡単に作成することができます。
非常に簡易な契約書ではありますが、文化庁が提供しているものであり、またこの手の相談内容には対応できる契約書になっておりますので是非ご活用頂ければと思います。

③は相手が契約書や覚書などの締結を嫌がる場合に有効な手段です。
当職がこの手の相談を受ける際に一番感じることは、「ボタンの掛け違い」が起こっているということです。
この点は、報酬(ライセンス料)を得ることを目的の1つとする(譲渡した後(報酬を得た後)に改良することについてはそれほど気に留めない)特許を扱っている当職としては、最初不思議な印象を持ったのですが、話を聞いていると、デザイナーの方々は皆さん、自分が創作したデザインを我が子のように思っておられるようです。そして、その子供(デザイン)が巣立っていく(世に出ていく)ことについては無報酬でも良いから協力したいと思っておられる反面、デザインが変更されることには強い拒否反応を示されます。
具体的には、「あんな変更をされるのであればもっと良い案があったのに」や「ここを変更するのであればここも変更しなければならない」というお話をよくされます。
従って、デザインの依頼(発注)または請け負い(受注)の際には、契約書の作成締結という労力を要することも重要ですが、③の手立てを取っておけば、案外、事がスムーズに運ぶのではないかと思います。