公的なブランド(ゆるキャラのデザインや公共施設の名称・ロゴマークなど)を考えた際に検討して頂きたいこと(情報提供制度のご紹介)

最近、地方公共団体や公共機関の方から、ゆるキャラのデザインや公共施設の名称・ロゴマークに関する商標調査・商標出願のご相談・ご依頼を受けることが多くなって来ております。
弊所が行う業務自体としては特別なことはなく、通常の商標調査・商標出願と同じ仕事内容になるのですが、「公的なブランド」については是非検討して欲しいことがありますので、今回、新着情報としてご紹介させて頂きます。

まず、商標については、過去の記事にも記載しているとおり、第1類~第45類の区分の中から指定商品又は指定役務を特定する必要があります。(https://www.okapatent.com/news/%e5%95%86%e6%a8%99%e5%87%ba%e9%a1%98%e3%81%ae%e9%9a%9b%e3%81%ae%e7%95%99%e6%84%8f%e7%82%b9%e2%91%a0%e3%80%80%ef%bd%9e%e8%a4%87%e6%95%b0%e3%81%ae%e5%95%86%e5%93%81%e3%83%bb%e5%bd%b9%e5%8b%99%e3%81%ae.html
従いまして、調査・出願を行う場合においても、商品又は役務が決まらなければ着手が出来ないことになります。

但し、「公的なブランド」については、指定商品又は指定役務についてだけ調査・出願すれば十分というものではありません。
確かに、指定商品又は指定役務について調査・出願しておけば、自らの使用に関しては安心して実施をすることができます。
しかしながら、「公的なブランド」は非常に強いブランド力を発揮することから、第三者が指定商品又は指定役務以外の商品や役務に使用する可能性があるのです。
例えば、ある果物のキャラクター(ゆるキャラ)を考えた場合であれば、自らが使用するのはこの「果物」になるので、調査・出願においては第31類(特に「果実」)を対象とすればよいことになるのですが、係るキャラクターを文房具(第16類)に使おうと考える第三者が出てきた場合には、第31類のみを調査・出願(特に、出願)しただけでは不十分になってしまいます。
このような第三者の出現を防止する最も確実な方法は、考えられる商品又は役務について商標出願をして権利化を行うことなのですが、可能性のある全ての商品又は役務について権利化をしようとすると莫大な費用がかかってしまいます。

そこで、「公的なブランド」を考えた際には、特許庁に対する情報提供制度を活用されることをお勧めします。
具体的には、まず、商標法の第4条第1項柱書および同項第6号をご説明する必要があります(以下の内容となっています)。

第4条第1項柱書
 次に掲げる商標については、前条の規定にかかわらず、商標登録を受けることができない。
第4条第1項第6号
 国若しくは地方公共団体若しくはこれらの機関、公益に関する団体であつて営利を目的としないもの又は公益に関する事業であつて営利を目的としないものを表示する標章であつて著名なものと同一又は類似の商標

要約すると、地方公共団体や公益事業に用いる非営利目的の「公的なブランド」で、かつ著名な「公的なブランド」については、第三者は、商品や役務を問わず(区分を問わず)、一切の商標権を取得することができない、という内容です。
そして、このような「公的なブランド」を把握するために、特許庁では情報提供を受け付けています。詳細は以下のURLをご参照下さい。

https://www.jpo.go.jp/system/laws/rule/guideline/trademark/binran/document/index/89_02.pdf

従いまして、この情報提供をしておけば、上記のような文具具(第16類)に関する第三者の出願があった場合でも、特許庁の方でこのような第三者の出願を拒絶してくれることになります。

なお、この情報提供の活用に関しては、1点だけ注意して頂きたい点があります。
それは、「公的なブランド」であれば全てが対象となる訳ではなく、第4条第1項第6号にも規定されているとおり「著名なもの」でなければならない、すなわち「著名性」が要求されるという点です。
そして、情報提供の際においても、この「著名性」を示す資料の提出が要求されることになります。
つきましては、情報提供を行う際には、新聞記事や広報誌等、著名性を示す資料がある程度集まってから実施されることをお勧めします。