年: 2026年

7月1日は「弁理士の日」です。

7月1日が「弁理士の日」になっていることはご存知ですか?

弁理士法の前身である「特許代理業者登録規則」が、明治32年(1899年)の7月1日に施行されたのを記念して、日本弁理士会では7月1日(施行日)を「弁理士の日」に制定しています。
弊所も各種の媒体に広告を出して、啓発活動を行っております。
日本弁理士会においても各種のイベントを企画していますので、ご興味がございましたらご参加ください。

日本弁理士会関西会主催 記念事業
https://www.kjpaa.jp/seminar/62332.html

地方自治体の知財意識

今回の新着情報は、当職が知的財産に対する保護の意識の重要性を再認識した事例(館林市のマスコットキャラクターの名称変更事件)を紹介したいと思います。なお、一部、当職の推測が入りますが、事実と異なる部分がありましたらご容赦ください。

先日、群馬県の館林市が、自市の観光キャラクターの名称を「ぽんちゃん」から「たてポン」へ変更することを発表しました(資料記事)。
名称を変更すること自体はそれほど珍しいことではないのですが、今回の名称変更はその理由(変更までに至った経緯)が本来あってはならない事であり、名称変更を決断したその後の館林市の対応にも当職としては釈然としない部分がありましたので、今回新着情報としてUPしたいと思います。

今回の事例の具体的な経緯(時系列)は以下のとおりです。
 (1)2010年、館林市が「分福茶釜」をモチーフにした観光キャラクター(名称を「ぽんちゃん」)を作成し、館林市の観光大使としました(記事)。その際、館林市は当該キャラクターの図案・名称に関する商標出願は行っていません。(因みに、このキャラクターは、2015年に開催された「ゆるキャラグランプリ2015」において総合ランキングで参加総数1721体中、33位になったのだそうです。)
 (2)一方、2021年12月~2022年6月にかけて、E氏(館林市在住の個人のもよう)が「ぽんちゃん」について5件の商標出願を行いました。(なお、その後、この5件の商標出願は2022年6月~2025年9月にかけて全てが登録査定となります。)
 (3)E氏の商標出願の存在を知った館林市は、E氏の商標出願の権利化を阻止すべく、2022年8月~2022年9月にかけて、5件の商標出願の内、1、2件目の商標出願(商標登録)については異議申立を行い、3~5件目の商標出願については特許庁に情報提供を行っています。ここで、1、2件目の商標出願と3~5件目の商標出願に関する対応が異なっているのは、恐らく、1、2件目の商標出願については、E氏の商標出願の存在を把握した時には既に登録査定となっていたためではないかと思われます。そのため、館林市は出願段階では対応することができず、権利化後の異議申立をせざるを得なかったものと思われます。また、無効審判ではなく異議申立を選択したところも、館林市の認識の甘さ(館林市がこの時点で事の深刻さを認識していなかったこと)がよくわかります。
 (4)しかしながら、1、2件目の商標出願(商標登録)に関する異議申立は維持決定(E氏の商標登録は維持)となります。また、3~5件目の商標出願については審査において拒絶理由通知等がなされた(情報提供が考慮されたか否かは不明)ものの、最終的にはいずれも登録査定となり、館林市の「E氏の権利化阻止」という計画は失敗することになります。
 因みに、3件目の商標出願については特に激しい攻防が繰り広げられてます。具体的には、まず審査においては拒絶査定となります。次に、出願人(E氏)側は、係る拒絶査定に対して該拒絶査定を不服とする拒絶査定不服審判を特許庁に請求しますが、審判においても拒絶審決となります。しかしながら、出願人(E氏)側は諦めず、係る拒絶審決に対して該拒絶審決を不服とする審決取消訴訟を知財高裁に提訴します。そして、裁判の結果、知財高裁は出願人(E氏)側に逆転勝訴の判決(拒絶審決を取り消す旨の判決)を言い渡し、その後、特許庁において審査のやり直しが行われ、登録査定となっています。(E氏の凄まじい執念を感じます。)
 (5)館林市は、(4)の結果(特に3件目の結果)を受けて、「ぽんちゃん」の使用断念を決断し、名称を「ぽんちゃん」から「たてポン」へ変更することを発表しました。(なお、キャラクターの図案については当初のものをそのまま継続して使用しています。)

次に、当職が今回の一件について釈然としないと思う点(2点)を述べたいと思います。
 まず1点目は、キャラクターを作成し、使用を開始した2010の時点で、なぜ館林市はキャラクターの図案・名称について商標出願をしなかったのか、という点です。館林市が今回のような後手後手の対応をせざるを得なかった最大の問題点(落ち度)はこの点に尽きます。商標出願さえしていれば、そもそも今回のような騒動は発生しませんでした。行政の怠慢と言っても差し支えないと思います。
 その証拠に、館林市は、E氏が5件の商標出願を行った後(2021年12月以降)に、慌てて当該キャラクターの図案と名称(「ぽんちゃん」)に関する商標出願(2件、図案:商願2022-32589号・出願日2022/3/8、名称:商願2022-91767号・出願日2022/8/8)を行っています。なお、2件の商標出願は同日の出願ではなく、何故か名称の商標出願が図面の商標出願から5か月も後になされています。(館林市がE氏と接触していたのかもしれませんが、こうなると、行政の怠慢を通り越して、もう意味がわかりません。)
 次に2点目は、名称を変更した後の館林市の対応です。具体的には、館林市は変更した名称(「たてポン」)について商標出願(商願2025-56008号・出願日2025/5/22、その後登録査定となっています)を行っているのですが、その商標出願の内容(特に、指定商品・役務の内容)が変更前の商標出願(商願2022-91767号)の内容と大きく異なったものとなっている、という点です。具体的には、両出願の内容は以下のような内容となっています。

  変更前の名称の商標出願 変更後の名称の商標出願
出願番号
(登録番号)
商願2022-91767号 商願2025-56008号
(登録第7003839号)
出願日 2022/8/8 2025/5/22
商標 ぽんちゃん たてポン
指定商品 9類 指定無し
14類 指定無し
16類 指定無し
18類 指定無し
20類 指定無し
24類 指定無し
25類 指定無し
28類 指定無し
30類 指定無し
指定役務 35類 35類
36類 36類
39類 39類
41類 41類
43類 43類

 この通り、変更前の出願では指定商品としていた9~30類の指定商品が、変更後の出願からはごっそり抜け落ちており、役務に関する指定のみに留まっているのです。特に、9類と16類は、上記(4)(5)にて館林市が名称変更を決断するきっかけになったと思われる、E氏の3件目の商標出願の指定商品として指定されているものです。つまり、館林市が当初必要としていた9類(電子出版物)や16類(文房具類)は、変更後の名称においては権利化ができていない(独占権が取得できていない)ということになっているのです。
 さらに、館林市が当初必要としていた20類(家具)については、既に第三者(住宅設備メーカー)によって商標権(登録第5225790号、登録第5225791号)が取得されてしまっています。つまり、20類(家具)については、現時点において館林市が商標権を取得することが100%不可能な状態になっているのです。
 記事では、『「たてポン」の商標登録も済ませた。』と記載されていますが、この商標権(登録第7003839号)の内容では、館林市の観光行政を遂行する上において不十分な権利ということになっていると思われます。この対応も行政の怠慢と言って差し支えないと思います。なお、館林市の出願は全て弁理士が代理人として対応しているので、弁理士としてどのようなアドバイスをしているのか、という疑問も禁じ得ません。

 最後に余談になりますが、E氏が「ぽんちゃん」の商標権取得に何故そこまで執着したのかという点についても当職は疑問に思いました。E氏の氏名は出願人として公開されていますが、氏名をインターネットで検索をしても職業や所属等の身分に関する情報が全く出てきません。館林市とどのような関係やいきさつを持っている人物なのか等、一切不明です。取得した5件の商標権の中には権利取得してから4年を経過している登録商標もありますが、関連する事業を実施しているような形跡も見当たりませんでした。
 一方、E氏は全ての商標出願を、弁理士を使わずに自分1人で行っています。3件目の商標出願に関する審決取消訴訟も裁判所相手に本人訴訟で行っています。一方、E氏が特許庁や裁判所に提出している書類は、その記載内容(書きぶり)を見ると、有資格者(弁理士や弁護士)顔負けの立派なものを作成されています。相当な専門知識を持っていると推測するのですが、インターネットで検索をしても情報が全く出てきません。

今回の事例は調べれば調べれるほど謎だらけで、また行政および代理人の行動にも本当に理解不能としか言いようのない、有り得ないレベルの話、という感想を持ちました。以上が当職の所感になります。

因みに、当職も地方自治体のキャラクターやロゴマークの権利化の代理をすることがありますが、こんな「失態」はしたことがありません(笑)。
一例として、過去の新着情報にUPした海南市の「海ニャン」の権利化の代理をしましたが、以下の対応をしております。
キャラクターの図案と名称について、事前調査をした上(ほぼ登録されるであろう事を確認した上)で図案の出願と名称の出願を同日に出願し、権利化しました。そして、その他として、海南市役所の担当者の方には、商標法第4条第1項第6号の情報提供も念のためにしてもらっています。
図案 出願日:2020/4/21、登録番号:登録第6291566号
名称 出願日:2020/4/21、登録番号:登録第6310784号
これが弁理士として当たり前の仕事と思うのですが、当職は今まで以上に気を引き締めて弁理士活動を行いたいと思います。

無料相談会の趣旨について

この度は岡 特許商標事務所HPをご覧頂き、ありがとうございます。
さて、弊所の特徴である無料相談会をご説明させて頂きたいと思います。

この無料相談会は、当職が勤務弁理士時代から沈思黙考していたものであり、独立を決意した動機の1つでもあります。
また、弊所の理念にも通じるものであり、このHPを開設した理由でもあります。
当職の故郷である和歌山県は農林水産物を始めとする多くの産業資源や様々な観光資源があり、それらを活用して新技術や新商品を生み出されている方が多くいる一方、それらをうまく保護し活用できていないがために事業として発展していない事例(個人の趣味レベルの範疇で留まっている方々)を多く見てきました。
また、和歌山県は知的財産の保護・活用に関する意識が残念ながら他の都道府県に比べて低く、特許や商標の出願数も近畿地方の中では毎年最下位争いをしている状況となっています。

当職は弁理士登録以降、このような状況(資源もアイデアもあるのに、あまりにも事業としての成功率、成長率が低いこと)がなぜ続いているのかをずっと考えていました。
事業化の成否は技術や商品の良し悪しだけではなく、様々な要因があると思いますが、そもそも知的財産制度自体を知らない方(特許や商標という言葉は聞いたことがあっても、内容を知らない方)や、あるいは日々の資金繰りや営業活動に奔走するのに手一杯で知的財産と無縁の経営をしてきたという方が案外多く、折角生み出した知的財産をうまく保護・活用できていないのではないかと思い始めました。

なお、中小企業庁が2009年に発行した中小企業白書においても、特許を保有している企業(知的財産の保護に気を遣っている企業と言ってもよいかもしれません)は、そうでない企業に比べて従業員1人当たりの営業利益が高くなることが統計上、裏付けられています。
また、同白書には出願をしない理由も統計が取られていますが、中小企業はコスト負担が大きいことがネックになっています。
もちろん、出願をして権利を取得することが全てではなく、必要に応じて営業秘密(ノウハウ)として管理することも重要なのですが、ノウハウ管理を選択した場合でも第三者が同じノウハウについて権利を取得しまった場合への対応等、適切な手当をした上でノウハウ管理をされているのか、甚だ疑問です。

また、知財についての関心はあるのだが、特許事務所(弁理士)に相談すること自体に敷居の高さを感じている方も多くあるのではないかと思い始めました(すぐにお金の話をするのでは?依頼を前提としないと真剣に話を聞いてくれないのでは?素人がトンチンカンな話をすると怒られるのでは?)

そこで、気軽に、知財について日頃お考えになっていることや疑問を相談して頂き、知財制度を理解してどのような対応をすればよいかを知って頂く機会を設けるべきと思い、郷里の知財の啓蒙を図るべく無料相談会の開催をしている次第です。
また、中小企業白書の事実を知っていただき、和歌山の事業者様もさらに上のステージへと事業を進めて頂きたいという思いもあります。
従いまして、ボランティアとして実施していますので、弊所への仕事の依頼などを誘導するようなことは一切致しません(ご質問があった場合にも費用などの回答は極力しないようにしています。簡単な書類であれば書類作成の仕方も指導しています。)。
また、何度でも無料で相談対応をさせて頂いております(他にご予約の方がいない場合は時間の制限も設けず、対応させて頂いております。ただ、あまりにも長時間になる場合には次回の相談日に再度お越し頂くようにお願いすることがあり得ますが...)。

開所以来現在に至るまで、和歌山県全域や泉南地区にお住まいの方々のご相談に対応させて頂いている実績(のべ約300件)がありますので、是非お気軽に弊所無料相談会をご活用下さい。

GWの営業について

弊所は、開所以来、GW・お盆・年末年始を問わず、特許庁が開庁している日は営業することにしております。
従いまして、GW期間につきましても以下のスケジュールで営業・稼働しておりますのでよろしくお願い申し上げます。

~4月28日(火)        :通常営業
4月29日(水)         :祝日
4月30日(木)、5月1日(金) :通常営業
5月2日 (土)~5月6日(水) :休日・祝日
5月7日 (木)~        :通常営業

AIと知財

今回の新着情報は前回の新着情報に関連する話になりますが、知財分野におけるに関する司法判断(判決)が日米両国で相次いで示され、知財分野におけるAIの位置づけについて1つの結論が出たので、当職の所感と合わせてUPしたいと思います。

裁判の概要は、DABUS(ダパス)というAIが創作した発明・絵画について、AI自体が発明者・著作者になれるのか否かについて争われたもので、判決は「AI自体は発明者・著作者にはなれない」というものです。
なお、知財の世界(特許権や著作権の世界)では、発明者・著作者が出願および権利取得をする権利(権原)を原始的に保有することになりますので、AI自体が発明者・著作者になれるのか否かということを法律的にどのように考えるのかは、実は根本的な命題であり、非常に重要な解釈になります。(厳密に言うと商標だけは少し異なるのですが、その他の知的財産権は全て、創作した者が出願および権利取得をする権利(権原)を保有することになっています。)

具体的には、まず、日本においてはDABUSを発明者とする特許出願がなされたのですが、以下の経緯をたどって裁判となり、最終的(控訴審)に原告(出願人側)の敗訴となりました。
(1)コンピューター科学者のスティーブン・ターラー氏(Stephen Thaler)が、DABUSに発明を考えるよう命令し、DABUSが回答(出力)したフラクタル形状を用いた容器の構造について、発明者をDABUSとし、出願人をスティーブン・ターラーとするPCT出願を行った。(PCT出願はその後、公開番号WO2020079499として国際公開)
(2)スティーブン・ターラー氏は、当該PCT出願を基礎とする日本出願(特願2020-543051)を行った。
(3)日本出願の審査段階(方式審査)において、日本国特許庁から「発明者は人(自然人)の氏名を記載しなければならない」との補正命令を受ける。
(4)出願人であるスティーブン・ターラー氏は、これを不服として、行政不服審査法に基づく審査請求を行ったが、審査請求を棄却する裁決がなされたので、出訴。
(5)第一審(東京地裁)、控訴審(知財高裁:令和6年(行コ)第10006号)とも、原告(出願人)が敗訴。
なお、原告(出願人)は上告することが可能ですが、上告審は事実審ではないので、結論は変わらないと思われます。つまり、司法判断として結論が事実上、確定したものとなっています。

次に、米国においては、DABUSが創作した絵画について著作権申請がなされたのですが、以下の経緯をたどって裁判となり、最終的(米連邦最高裁判所)に原告(出願人側)の敗訴となりました。
(1)スティーブン・ターラー氏(Stephen Thaler)が、DABUSに絵画の創作を行うよう命令し、DABUSが回答(出力)した絵画について、米著作権局に著作者をDABUSとする連邦著作権の登録を申請した。(因みに、作品名をA Recent Entrance to Paradise(楽園への新たな入り口?)と言うのだそうです。)
(2)米著作権局は、著作権の成立には人間の著作者が必要であるとして申請を却下。
(3)スティーブン・ターラー氏は、これを不服として、出訴。
(4)第一審(コロンビア特別区連邦地方裁判所)、控訴審(連邦控訴裁判所)、上告審(連邦最高裁判所)とも、原告は敗訴し、司法判断として結論が確定したものとなっています(資料)。

このように日米ともに「AI自体は発明者・著作者にはなれない」という判断が示されたのですが、この2つの司法判断をどう評価するのかについては注意が必要です。
その理由は、結論(判決)に至った根拠(論旨)が、日米ともに「そもそも法律には、発明者・著作者となるのは「者」、すなわち人(自然人)としか記載されていないから」というものだからです。(細かい話になりますが、法律は「者」、「物」、「もの」を使い分けており、これが非常に重要な意味を持ちます。)
つまり、今の法律はAI自体が創作をすることを想定せずに制定されているものであるため、今の法律を適用する限りにおいては「AI自体は発明者・著作者にはなれない」という結論しか導けない、ということなのです。

しかしながら、AIが創作した発明や著作物(以下、AI創作物と呼びます)は、今後ますます増加していくことが予想されます。そして、これらAI創作物には、その全てについて当然に知的財産権が発生し、その中にはビジネス上、価値を持つ物も出てくることが予想されます。従って、AI創作物に基づいて発生する知的財産権の取扱いが問題となるケースが増加していくことが予想されます。(既に、弊所の無料相談会においても、AI創作物を用いたビジネスを考えられている方が相談に来られ始めています。)

このような知的財産権の取扱いを考える場合、やはり考えなければならないのは、誰が権利者になるのか、言い換えると誰を権利者にするのか、ということです。
この「AI創作物について誰が権利者になり得るのか」については、現在、以下の3つの考え方があります。
(1)原理原則に立ち返って、実際に創作活動を行ったAI自体が権利者になる資格を有するとする考え方。(法律的には「者」を「者および物」や「者およびAI」に改正する?)
(2)そもそもAIは権利者になる資格を有さず、AIに創作を命令した者(人)が権利者になる資格を有するとする考え方。(法律的には「者」はそのまま?)
(3)AI創作物については誰も権利者になれないとする考え方。(法律的にはAI創作物は発明に該当しない旨の規定を新設する?)

そしてこの3つの考え方ですが、今回の判決によって、(1)の考え方は否定されたものとなりました。
そうすると、(2)、(3)のいずれかの考え方を採用することになってくるのですが、(3)のAI創作物に関して無法地帯化とすることについては、トラブルの元になるので法律的に考えにくく、ビジネス(収益を図るという経済活動の根本)の観点から見ても考えにくいと思います。
従って、当職の所感としては、AI創作物について誰が権利者になり得るのかについては、(2)の考え方で議論(法改正の議論)が進んでいくものと予想しています。
また、これを裏付けるように、既に(2)の考え方で特許出願がなされ、特許査定を受けている事例(特許第7734902号)もあります。当該特許は、出願人(特許権者)は人(個人)ですが、実は出願人がAIに命令してAIが実際に創作した発明に関するものです。つまり、AI創作物であっても、発明者および出願人を人(者)にすれば今の法律の下でも問題なく出願ができ、権利が取得できるということになります。

ただ、(2)の考え方で進んで行くと、問題となるケースが今後出てくるのではないかと当職は思っています。
具体的には、AIは人間が命令することで動き、回答(出力)しますが、その命令文(プロンプト)の内容や表現によって、生み出される結果物(知財の場合はAI創作物)の内容やレベルも変わってきます。AIを使いこなすためには、命令文(プロンプト)の高い作成能力が求められるのです。
上記した特許(特許第7734902号)も含めて、まだ今のところは或る意味、遊び感覚でAIを使って様々なことを試している段階ですが、今後、AI(半導体)技術が進歩して、ビジネス上においても有用な結果物をAIが生み出すことになってくると、命令文(プロンプト)は複数の人間や組織が関与して試行錯誤しながら緻密に作成されることになってくると当職は思います。
それこそ、多くの技術者・開発者が日々、行っている実験・試作・テストと同じような流れで命令文(プロンプト)の作成作業が行われることになってくると当職は思います。
或いは、最初の命令文(プロンプト)は人間が作成しても、AI創作物を生み出した直接(最終)の命令文(プロンプト)は最初の命令文(プロンプト)の結果物に基づいてAIが作成したものであるというようなこともあり得るかもしれません。
そうなってくると、(2)の考え方でも誰が権利者になる資格を有することになるのかが、よくわからないことになってくるのではないかと思います。
つまり、「誰がAIに創作を命令した者になり得るのか」についてのルール作り(法整備)が必要になってくると当職は思います。
このような観点についての議論や提言は、知財を専門としている学者たちの間でもあまりなされていないように思いますので、注目していきたいと思います。

 

弁理士試験制度の改正

今回の新着情報は、弁理士試験に関するものになります。
先日、再来年度(令和9年度)の弁理士試験から試験制度の一部が変更されることが、特許庁から発表されました。(PDF資料
弁理士試験はこれまでも何回か制度改正が行われてきました。
ただ、今までの改正はどちらかと言えば時代や産業界の要請によるところが大きいものでしたが、今回の制度改正については少し後ろ向きな改正ではないかと当職は感じましたので、当方が最近感じていることも併せて、新着情報としてUPしたいと思います。

まず、弁理士試験は毎年1回行われているもので、一次試験(マークシート試験:5月頃)、二次試験(論文試験:7月頃)、三次試験(口述試験:10月頃)の3段階の試験から構成されています。この点(3段階の試験から構成されている点)については、試験制度の創設以来、変更されていません。

ただ、各試験の内容については、少しずつ改正(変更)が行われています。
因みに、今までの各試験の主な改正点の概要(変遷)は以下のようなものとなっています。

一次試験
 いわゆる「なし解」問題の廃止(大昔は正解の選択肢がない問題がありました。)

二次試験
(1)必須科目の科目数の減少(10時間で10科目→5時間で4科目)
 大昔は特許・実用新案・意匠・商標・条約の5つの科目にそれぞれ2つの問題(各2時間)があり、合計10問(合計10時間)の論文記述をしなければなりませんでしたが、現在は特許・実用新案(条約に関する知識も絡めたもの)が2つの問題(2時間)、意匠が2つの問題(1.5時間)、商標が2つの問題(1.5時間)の合計6問(合計5時間)の論文記述となっています。
 また、現在の必須科目は受験生にどういう措置を採るべきかを考え記述させる「事例問題」が主となっており、暗記が重要となるいわゆる「一行問題(例:特許無効審判制度について説明せよ。)」がほとんどであった、大昔の必須科目とは内容が大きく変わっています。

(2)選択科目の免除制度の導入
 修士・博士の学位を持つ者や一定の公的資格(薬剤師など)を有する者は、選択科目の免除措置を受けることができるようになりました。(なお、当職はこの要件に該当しない者(学士)だったので、選択科目も受験しました。)

三次試験
 今まで大きな改正はなし

今回、二次試験の選択科目について、大幅な改正が行われました。
具体的には、選択科目の見直しが行われ、一部の科目については統合または廃止がなされることになりました。
ここで注目すべきことは、特許庁が今回の改正の理由を「受験者数の減少」としている点です。
あえて誤解を招くような書き方をしますが、上記した今までの改正は、特許庁として、実際の現場で「使える弁理士」を増やしたいという、前向きな意図を持った改正であったと思います。
しかしながら、今回の改正については、受験者が少なくなってしまったので「行わざるを得ない」という、後ろ向きな意図を持つ改正であるように思います。
こんな性質の試験制度の改正は弁理士試験が創設されて以来、初めてだと思います。
試験科目の統廃合をしなければならない程に受験者数が減少しているということ、つまり、弁理士という職業に魅力を感じない人が急速に増えているということに驚いた次第です。

また、弁理士という専門職が時代とともに社会にとって不要になりつつあるのではないかとも当職は思っています。
当職は、兼ねてからAIが進化・普及して現場レベルで使えるものになってくると、分野を問わず全ての士業の業務はそのほとんどがAIに置き換わり、交渉等のごく一部の業務を除いて士業は不要になると思っています。(日本弁理士会などの各士業の業界団体は我々の仕事がAIに置き換わることは一切ない、などと主張していますが、立場上、強がっているだけです。)
弁理士に着目すると、先行調査や、出願・審査・訴訟段階における書類作成という、弁理士業務の大部分を占める業務はAIに置き換わり、本人が弁理士(代理人)に依頼することなく、問題なく行うことができるようになってくると思っています。
極端な話をすれば、当職の世代が弁理士(士業)として独立開業できる最後の世代(だった?)ではないかと思っているくらいです。
今回の弁理士試験の改正は、自分の予想が裏付けられているような感覚を抱いた出来事でした。

新年のご挨拶

謹んで新年のご祝詞を申し上げます。
旧年中は格別のお引立てを賜わり誠にありがとうございました。
お陰様で弊所は開所以来16度目の新年を迎えることができました。
これもクライアント様を始め、皆様のご高配のお蔭と衷心より厚く御礼申し上げます。
本年もご期待に沿えますよう一層精励致しますので、何卒倍旧のご愛顧を賜わりますようお願い申し上げます。

岡特許商標事務所 所長 弁理士 岡 健司