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10月28日(10月第四日曜日)の相談会は受付を終了させて頂きます。

10月28日(10月第四日曜日)の相談会につきましては、現時点で全ての枠が埋まりましたので受付を終了させて頂きます。
なお、受付フォームはシステム上、特定日の受付の締め切りができないことから、ご予約の入力・送信が出来てしまい、自動的に受付完了の返信メールが送信されることになりますが、10月28日についてはご予約をされても相談をお受けできませんので、ご了承の程よろしくお願い申し上げます。

商標出願の際の留意点② ~商標の使用意志について~ (弁理士 岩佐佑希子)

岡特許商標事務所 弁理士の岩佐です。
今回は、「商標の使用意志」についてご説明したいと思います。

前回の記事で、商標出願をする際には、複数の指定商品・役務を一つの出願で指定できること、
指定商品・役務の属する区分が増えるごとに出願や権利維持に必要な料金が高くなることを書きました。

「それじゃあ、同じ区分内であれば料金が変わらないなら、同じ区分に属する商品・役務を全部書いてしまえばお得なのでは?」と思われるかもしれません。
確かにその通りなのですが、制限なしにいくつでも書いておけば良いかというとそうではありません。

本来、商標権というのは、「使用している」もしくは「今後使用の予定がある」商標について独占排他権を与えるものです。
これは、使用する予定がないものを権利として登録してしまうと、他に使用したい人がいる場合、その他人の産業活動を妨げることになってしまうからです。

ただし、実際の審査では、全ての出願について出願人に使用の意思をいちいち確認することは行っておりません。
ですが、あまりにもたくさんの商品・役務を記載した場合など、「商標の使用及び使用の意思があるかについて合理的疑義があるもの」である場合には、「本当に使う予定があるの?」ということで、特許庁から拒絶理由の通知がなされ、使用意志の確認(証明書類の提出等)を求められます。
具体的には以下の(1)、(2)、(3)に該当する場合に、証拠書類の提出等が求められます。

(1)いわゆる「総合小売等役務」を指定した場合
(2)類似の関係にない複数の小売等役務を指定している場合
(3)1区分内での商品又は役務の指定が広い範囲に及んでいる場合

(1)の「総合小売等役務」とは、百貨店や総合スーパーなどのように、幅広い商品の小売または卸売を行う場合に指定するものですが、このような役務を個人がするとは考えにくいので、個人が出願した場合には、使用意志について疑わしいものとされます。また、法人であっても、調査の結果疑わしいとされる場合もあります。
(2)は、類似の関係にない複数の小売等役務(例えば、「被服の小売」と「自動車の小売」)を同一事業者が行うことは一般的に考えにくいためです。
(3)は、原則として、一区分内において、23以上の類似群コードにわたる商品・役務を指定している場合、指定する範囲が広すぎるとして、使用意志について疑わしいものとされます。
従って、逆に言えば、同一区分内の類似群コードの合計が22までであれば、使用意志の確認をされることはありません

ここで、「類似群コード」とは、指定商品・指定役務の類似性を判断するために特許庁により割り振られたアルファベットと数字からなる識別コードのことで、全ての商品・役務に付されています。
(例えば、ビールには[28A02]、酎ハイには[28A02]、日本酒には[28A01]が振られていて、ビールと酎ハイは類似群コードが同じですので、互いに類似すると推定されます。一方、ビールと日本酒は類似群コードが異なるので非類似と推定されます。※類似群コードによる類似性の判断はあくまでも「推定」です。)

実は、この(3)については、今年の4月より改定商標審査便覧の運用が開始され、出願手続上でのルールが大きく変更されました。
以前の運用では、類似群コードの上限数が7を超えると(8以上の場合)、使用意志の確認のため、拒絶理由が通知されていました。
また、同じ商品・役務に複数の類似群コードが付されている場合はカウントとしては1つとするなど、類似群コードの数え方も少し複雑でした。

一方、現在の運用では、商品・役務に付されている類似群コードの数え方は単純に合計すればよいだけとなりました。
(例えば、一つの指定商品・指定役務に2つのコードが付されている場合は2つとしてカウントすればよいので、分かりやすくなったと思います。)
また、類似群コードの上限数も増えましたので、より広い範囲の商品・役務を指定することが可能になりました。

今後、一つの出願で複数の商品・役務を指定する場合は、効率的な出願のために参考にしていただければと思います。
詳しくは、特許庁のHPをご参照ください。

https://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/h30-03_oshirase_syouhyoubin_kaitei.html
https://www.jpo.go.jp/tetuzuki/t_shouhyou/shutsugan/shitei_chui.htm
3.指定商品・指定役務について、使用又は使用の予定がある商標を出願していることについて)

事務所だより🌷

事務所だより担当の的場です。                                            今回で2回目となります。

 

今夏にかけて、大阪府北部地震、7月豪雨災害、台風21号による大規模災害、北海道胆振東部地震と沢山の被害があり心痛める日々が続いておりました。

この度、被災されました皆様ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
皆様の安全と被災されました方々の一日も早く心穏やかに過ごせる日々が来ることを心よりお祈り申し上げます。

 

今回のテーマはその『自然災害』についてです。

 

平成最後となるこの夏だけで数多くの甚大な災害を目にする事態となり、また、今年に入ってからは北陸地方を中心とした豪雪被害もありました。                                               2018年もあと数ヶ月残されていますが、まさに日本各地どこにいようが安全な場所はほとんどなく、どこでも災害が起こりうるという事を目の当たりにした年でもあったような気がします。

南海・東南海地震や東京都直下型地震などについては、ニュースでも大きく取り扱われているために、その周辺地域では常に念頭に置いた生活を送るわけですが…                                           北海道ではあまりそう言った場所ではない断層で起きた地震だった様で、先にも記したように、日本列島で生活を送るという事は、まさに大きな地震と隣り合わせで生活をしているという事を強く思う出来事でした。

 

この事務所でも、大きい地震が来たときは先ずどうすべきかを所長と話し合った事もあります。               私自身も自宅で地震が来たら…とか、事務所で地震が来たら…とか、通勤中に地震が来たら…など、色々とシミレーションを立てています。                                                     他の地域より、地震に見舞われる確率が高いので自宅にも備えはあります。                        絶対にいつか来るだろうと・・・。

そんな中、今回の台風21号では、和歌山にも目に見てわかる被害が沢山ありました。                     弊所でも屋上に設置しているエアコンの室外機の1台が破損する被害がありました。                    台風は勢力が強いままやって来ると分かっていたので、高台にある我が家の窓に養生テープを張ったり、ブルーシートも被せたりと何やかんや・・・。                                                   懐中電灯もある。ラジオもある。まぁこれで大丈夫だろう!

いざその時が来ると・・・                                              窓が割れるのではないかという恐怖から始まり、家の屋根が吹っ飛ぶのではないかと言う恐怖。               停電時は、テレビが観れないので簡易ラジオからくる地元の状況しか分からない。                                    スマホでネットニュースを観ようとしたが、充電が心配で観れない。                           慌てて冷蔵庫の物を保冷剤、氷と共にクーラーBOXに避難させる。                           さて、風雨が止んだ明るいすきに近くのスーパーに買い出し。

この恐怖の時間により、用意周到にしていたはずの私の思考は全く冷静な判断が出来ていなかったと後になって気が付きました。

スマホの充電は車でも出来る環境にあるので、不安に思わなくても良かったし、テレビも見る事が出来た。                                           風呂も停電前に入っておけばよかった・・・。                                     冷蔵庫に関しては全く開けないわけにはいかないが、使用するものはクーラーBOXに入れ、庫内環境や物にもよるが、とにかく開けなければ、2~3時間は保冷効果はあるようで慌てることはなかったし・・・。

停電が私の中で何かを慌てさせ、真っ先に夕飯を買いにいかねばとスーパーに行ったものの、よく考えると自宅にあるカセットコンロの存在を忘れていた。しかも、燃料の備蓄は沢山ある(もちろん水も米も、ラーメンもある)。全く慌てることはなかったのだ(これが殺到につながるのかもしれない・・・)。

 

その他、7月豪雨で被災した真備町の近くに住む友人から教わった事として。

・災害時は家族の居場所がバラバラの場合があるので、職場にいる時の避難場所をどこにするか家族に伝えておく(探すために役所に電話をかけても個人情報保護により教えてくれない)。                               ・通帳と印鑑はセットで持っておきたいという気持ちがあると思うが、盗難等の被害も話に聞くため、避難所には絶対一緒には持っていかないでと郵便局の方がおっしゃっていた(通帳は再発行出来る為、持ち歩かなくてもよい)。

と、言うことを教わりました。                                             なるほどなと聞いて納得しました。

 

SNSで流れてきた中には、とても役立つ情報が流れてきたり、電気が使えないし外でバーベキューでもしようかと言う人、停電になったこの機会に空を見上げると、北海道の月明りや星はとても綺麗だとつぶやく人。

もちろん大変な被害がない中での事だったとは思いますが、これ位心に余裕を持って今回の件を教訓に、この先起こりうる災害に備えたいと強く思いました。

 

 

 

GW・お盆・年末年始の営業について

弊所は、GW・お盆・年末年始を問わず、特許庁が開庁している日は営業することにしております。
従いまして、お盆期間につきましても以下のスケジュールで営業・稼働しておりますのでよろしくお願い申し上げます。

8月10日(金):通常営業
8月11日(土):休み
8月12日(日):休み
8月13日(月):通常営業
8月14日(火):通常営業
8月15日(水):通常営業
8月16日(木):通常営業
8月17日(金):通常営業

商標出願の際の留意点① ~複数の商品・役務の指定について~(弁理士 岩佐佑希子)

はじめまして。
昨年の6月から当事務所にて勤務しております弁理士の岩佐と申します。
入所して約1年が経ちました。
これから不定期ですが、知的財産権に関する役立つ情報を更新していきたいと思います。

早速ですが、今回は、商標出願の際の留意点としまして、「複数の商品・役務の指定」についてご説明したいと思います。

まず、商標出願をする際には、願書に以下の2点を記載する必要があります。

 (1)使用する商標(ネーミングやロゴ)
 (2)その商標をどんな商品や役務(サービス)に使用するか

(2)を指定商品・指定役務と呼び、すべての商品・役務は第1類~第45類の区分に分類されています。そして、願書には、具体的な商品・役務の名称とともに、それが属する区分についても記載する必要があります。

ここで、商標出願の大原則として「一商標一出願」と「一出願多区分制」というものがあります。
「一商標一出願」は、一つの商標について一つの出願をする、つまり登録したい商標が複数ある場合は商標ごとに出願をしなければならないというものです。
一方、「一出願多区分制」は、一つの出願で複数の区分に属する指定商品・指定役務を記載することができるというものです。

ただし、ここで注意して頂きたいのは、指定する商品・役務の属する区分の数が増えるごとに、出願や権利維持に必要な料金が変わってきます。
(例えば、「ABC」という商標について、酒類の中でも「ビール、酎ハイ、日本酒」という商品を指定して出願したい場合は、ビールは第32類という区分に分類され、酎ハイ、日本酒は第33類に分類されていますので、出願料は、[3400円+(区分の数=2)×8600円)=20600円]となります。)

従いまして、指定したい商品・役務の区分が多岐にわたるような場合は、費用対効果を考えなければなりませんので、優先順位を付けたり、商品・役務の指定の仕方に工夫が必要となってきます。

案件により事情が異なりますので、詳しくはご相談いただければと思います。

補助金情報(その8:和歌山市にお住まいの方へ)

和歌山市にお住まいの方への補助金情報です。

和歌山市では平成29年8月から知的財産権(特許権、実用新案権、意匠権、商標権)を取得するための費用(弁理士費用も含む)の一部を補助してくれる補助金制度(補助金名:ビジネスチャンス創出支援補助金)を実施されています。

和歌山市役所のご担当者様から和歌山市HPのリンク先が変更されたとのご連絡を頂きましたので、ご紹介させて頂きます。
和歌山市が実施している4つの補助金事業(①海外販路開拓事業②自社製品開発・改良事業③新製品広告宣伝事業④国内販路開拓事業)の中の「②自社製品開発・改良事業」について、以下の条件を満たす中小事業者様であれば補助率:2分の1以内で上限20万円(チャレンジ新商品認定事業者が認定商品を改良する場合には30万円。その中でもチャレンジ新商品グランプリに認定された事業者が認定商品を改良する場合には50万円。)までの補助を受けることができます。

なお、詳細については、和歌山市HP(http://www.city.wakayama.wakayama.jp/1016047/sangyoukigyousien/1017324.htmlまたはhttp://www.city.wakayama.wakayama.jp/1016047/sangyoukigyousien/1002340.html)をご覧ください。

・県外への販路を拡大するために、新規性を有する自社製品を開発、又は既存自社製品を改良する事業
・自社製品の開発に関しては、年度内に製品を完成させる事業
・既存自社製品の改良に関しては、年度内に改良製品を市場で販売する事業
・補助対象経費が20万円以上の事業

本制度は弊所HPにてご紹介している和歌山県の他市の補助金事業と異なり、商標権の取得に関しても補助を受けることができるところも魅力の1つではないかと思います。

もし、和歌山市にお住まいの方で特許権、実用新案権、意匠権、商標権の取得を検討されている方は、一度、和歌山市役所 産業交流局 産業部 商工振興課(電話:073-435-1233)又は産業政策課(電話:073-435-1040)にお電話をしてみて下さい。

事務所だより🌷

図面作成兼事務を担当しております的場です。
これから、不定期にはなりますが、事務所だよりをUPさせて頂きます。

1回目の事務所だよりとして、事務所内での嬉しい出来事をひとつ…。

最近、事務所にドリップタイプのマシンを導入しました。
今までは、お客様にお出しするものも含め、所内ではインスタントコーヒーかティーバックのお茶でしたが、来所されたお客様にもより美味しいものをご提供させて頂こうとの事で導入していただきました。
種類もいくつか選んでいただける様に、

コーヒーはブルーマウンテンと、ハワイコナ。
アイスコーヒー・紅茶・緑茶。

などを取り揃えております(今後、様子を見てラインナップを変更していきます)。
ご来所の際は、お好みのものをご遠慮なくお申し付けください( ^^) _旦~~
  
  
  
 


 
  

補助金情報(その7:海南市にお住まいの方へ)

海南市にお住まいの方への補助金情報です。
海南市では地域産業の振興と発展を図るために、市内の中小企業者が特許権などの知的財産権の取得を行う際の費用(弁理士費用も含む)の一部を補助してくれる事業(事業名:ものづくり創造支援事業(知的財産権取得事業))を毎年実施されています。
今年も本事業が開始されたとのお話しを海南市役所のご担当者様から頂きましたので、ご紹介させて頂きます。

以下の条件を満たす中小事業者様であれば補助率:2分の1以内で、かつ上限10万円までの補助を受けることができます。
なお、詳細については、海南市HP(http://www.city.kainan.lg.jp/business/shokogyo/1523177497128.html)をご覧ください。

・地域産業を主要業種とする事業者であること。
・主たる事業所が市内に所在すること。
・市税を完納していること。
・対象となっている事業について、国、県又はその他の団体から補助金等の交付を受けていないこと。

もし、海南市にお住まいの方で商品開発を検討されている方は、一度、海南市役所 まちづくり部 産業振興課 商工観光係(TEL:073-483-8460、メールアドレス:sangyosinko@city.kainan.lg.jp)にお電話またはメールをしてみて下さい。

GW・お盆・年末年始の営業について

弊所は、GW・お盆・年末年始を問わず、特許庁が開庁している日は営業することにしております。
 従いまして、GW期間につきましても以下のスケジュールで営業・稼働しておりますのでよろしくお願い申し上げます。

4月27日(金):通常営業
4月28日(土):休み
4月29日(日):休み
4月30日(月):祝日
5月1日(火):通常営業
5月2日(水):通常営業
5月3日(木)~6日(月):祝日、休み
5月7日(月):通常営業

弊所「無料相談会」において時々相談を受ける内容のご紹介(デザインに関する相談)

弊所では毎月第二・第四日曜日にボランティアとして「無料相談会」を実施しており、多くの方にご活用頂いております。
ご相談内容としては、相談者様が創作されたご発明に関するご相談や、新商品や新店舗を立ち上げるに当たってのネーミングやロゴマークに関する商標のご相談が多いのですが、時々、パッケージ・ロゴマーク・キャラクターなどのデザインに関する相談で来所される方がおられます。

来所される方は、発注者側(パッケージ・ロゴマーク・キャラクターなどのデザインを依頼した側)と、デザイナー側(デザインの依頼を請け負った側)のどちらの立場の方もいらっしゃいますが、相談内容およびその対応として汎用的なものがありますので、今回新着情報としてHPにUPさせて頂こうと思います。

相談内容としては、デザインを変更したい、あるいは変更されたというものになります。具体的には、発注者側の相談内容としては事情があって納品を受けたデザインの一部を変更したい(または変更した)が大丈夫かというものであり、デザイナー側の相談内容としては納品したデザインが発注者によって勝手に変更されたというものになります。

ここでまず問題となるのは、著作者(権利者)が誰であるのかという点です。
著作権法における著作者は著作物を創作した者(著作権法第2条)ですので、原則としては実際に創作活動を行ったデザイナーが著作者(権利者)になります。
なお、発注者がデザインの細部に渡ってデザイナーと何度も協議をして具体的な指示を出した上でデザインが完成しているような場合には、発注者がデザインを創作している者と言えるので発注者が著作者(権利者)になる場合もありますが、非常に稀であると思います(「○○な感じでお願いします」という程度の指示や、デザイナーが持ってきたデザイン案の一部について「ここは○○でお願いします」という程度では創作を行ったことにはなりません)。

次に、著作者がデザイナーである場合には、デザイナー(著作者)には、著作権法において著作権と著作者人格権という2種類の権利が認められることになります。
著作権は、著作物を複製する権利(複製権)や著作物をネットなどにUPする権利(公衆送信権)など、複数の権利(複製権、上演権、公衆送信権、口述権、展示権、頒布権、譲渡権、貸与権、翻案権、翻訳権、二次的著作物の利用に関する権利)を総称した権利のことを言い、各権利をそれぞれ別個に他人に譲渡することができます。
著作者人格権は、著作物を公表する権利(公表権)、著作者の氏名・ペンネームなどを公表・非公表とする権利(氏名公表権)、著作物(デザイン)の同一性を保持する権利(同一性保持権)の3つの権利を総称した権利のことを言い、他人に譲渡することはできません(亡くなるまでデザイナーが保有します)。

従って、デザインの依頼(発注)または請け負い(受注)の際に著作権および著作者人格権に関する「取り決め」をしていない場合には、発注者側が勝手にデザインの変更をしてしまうと、デザイナー側から著作権侵害の指摘を受けて、最悪の場合、訴訟に発展する可能性があります。

そこで、このようなトラブルを防止するためにも、デザインの依頼(発注)または請け負い(受注)の際には以下のいずれかの手立てを取っておかれることをお勧めします。
①著作権および著作者人格権に関する契約書や覚書などを締結する。
②著作権の譲渡(契約)を行う。
③「デザインの変更を行う場合には、事前にデザイナーに打診し、必要に応じて打合せを行う」ことを文書で確認しておく(変更の承諾を得るという仰々しいものではなく、事前に声掛けを行うことをメールのやり取りなどで確認しておく)。

①は正攻法の手段になります。
②は、発注者側にとっては都合の良いものでありますが、この場合には著作物を翻案する権利(著作権法第27条)と二次的著作物の利用に関する権利(著作権法第28条)も譲渡の対象であることを明確にしておくことが重要となります(著作権法第61条第2項)。

ただ、このような契約書を一から作成することは難しいと思います。
そこで、著作権に関する契約書を簡単に作成することができる手段(文化庁HPの著作権契約書作成支援システム)をご紹介します。

文化庁の著作権HPの
「誰でもできる著作権契約」のバナー(http://www.bunka.go.jp/chosakuken/keiyaku_intro/index.html)から、
「著作権契約書作成支援システム」(http://www.bunka.go.jp/chosakuken/c-system/index.asp)をクリックして頂き、「契約書の作成」の「4.イラストの作成(ポスター・パンフレットなどの作成)」をクリックし、「進む」をクリックします。
次に、入力画面が表示されますので、必要に応じて各欄の記入をします。
ここで、著作権を発注者側に譲渡する場合には、「2. 著作権の帰属」の「はい」を選択し、さらに「二次的著作物を作る権利」についても「はい」を選択します。
全ての入力の完了後に「入力確認」をクリックすると契約書を簡単に作成することができます。
非常に簡易な契約書ではありますが、文化庁が提供しているものであり、またこの手の相談内容には対応できる契約書になっておりますので是非ご活用頂ければと思います。

③は相手が契約書や覚書などの締結を嫌がる場合に有効な手段です。
当職がこの手の相談を受ける際に一番感じることは、「ボタンの掛け違い」が起こっているということです。
この点は、報酬(ライセンス料)を得ることを目的の1つとする(譲渡した後(報酬を得た後)に改良することについてはそれほど気に留めない)特許を扱っている当職としては、最初不思議な印象を持ったのですが、話を聞いていると、デザイナーの方々は皆さん、自分が創作したデザインを我が子のように思っておられるようです。そして、その子供(デザイン)が巣立っていく(世に出ていく)ことについては無報酬でも良いから協力したいと思っておられる反面、デザインが変更されることには強い拒否反応を示されます。
具体的には、「あんな変更をされるのであればもっと良い案があったのに」や「ここを変更するのであればここも変更しなければならない」というお話をよくされます。
従って、デザインの依頼(発注)または請け負い(受注)の際には、契約書の作成締結という労力を要することも重要ですが、③の手立てを取っておけば、案外、事がスムーズに運ぶのではないかと思います。