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7月1日は「弁理士の日」です。

7月1日が「弁理士の日」になっていることはご存知ですか?

弁理士法の前身である「特許代理業者登録規則」が、明治32年(1899年)の7月1日に施行されたのを記念して、日本弁理士会では7月1日(施行日)を「弁理士の日」に制定しています。
弊所も各種の媒体に広告を出して、啓発活動を行っております。
日本弁理士会においても各種のイベントを企画していますので、ご興味がございましたらご参加ください。

日本弁理士会関西会主催 記念事業
https://www.kjpaa.jp/seminar/57480.html

日本弁理士会関東会主催 記念事業
https://www.jpaa-kanto.jp/event/

「それってパクリじゃないですか?」放送終了

6月14日(水)の第10回放送を以って、「それってパクリじゃないですか?」の放送が終了しました。
放送開始前から知財業界の中では関心が高かったドラマでした。
特許庁も庁舎の提供や実際の審査官がエキストラとして参加するなど全面協力しており、庁のツイッターでも水曜日の前後には書き込みがされていました。
視聴率としてはあまり芳しくなかったようですが、今回、知財部や弁理士という職業を正面から取り上げるという「英断」をなされた日本テレビに敬意を表したいと思います。
個人的には、発生したトラブル(知財に関する事件)が毎度、放送回の中で解決するというスタンスに若干の違和感を感じました。
事件が毎回完結(解決)するという読み切りのようなストーリーよりも、9回と10回のように放送回を跨いで事件が解決するようなストーリーの方が、より丁寧に描写(知財面からの説明)ができ、話が面白くなったのではないかと思いましたが、色々な制約があったのだろうと思います。
また、折角の機会だったので、特許庁(公的機関)があれだけプッシュしているのだから、日本弁理士会としても何かしらの協力をして欲しかったと思いました。
何はともあれ、弁理士がドラマに取り上られる職業として認識されたことに感慨深いものを感じました。(当職が弁理士になったときには想像もできませんでした。)
もしかすると、弁理士が主役として登場するドラマは今回が最初で最後(?)になるかもしれませんが、諸先輩方が努力されて「弁理士」という職業の信用を世間に築き上げてこられた結果だと思います。
最近、弁理士の名称を用いてSNS上で特定企業の情報を摘示し、金融商品取引法により禁止されるインサイダー取引に該当するのではないかと指摘された若い弁理士がいたようですが、当職はより気を引き締めて弁理士活動を行いたいと思います。

無料相談会の趣旨について(再掲)

この度は岡 特許商標事務所HPをご覧頂き、ありがとうございます。
さて、弊所の特徴である無料相談会をご説明させて頂きたいと思います。

この無料相談会は、当職が勤務弁理士時代から沈思黙考していたものであり、独立を決意した動機の1つでもあります。
また、弊所の理念にも通じるものであり、このHPを開設した理由でもあります。
当職の故郷である和歌山県は農林水産物を始めとする多くの産業資源や様々な観光資源があり、それらを活用して新技術や新商品を生み出されている方が多くいる一方、それらをうまく保護し活用できていないがために事業として発展していない事例(個人の趣味レベルの範疇で留まっている方々)を多く見てきました。
また、和歌山県は知的財産の保護・活用に関する意識が残念ながら他の都道府県に比べて低く、特許や商標の出願数も近畿地方の中では毎年最下位争いをしている状況となっています。

当職は弁理士登録以降、このような状況(資源もアイデアもあるのに、あまりにも事業としての成功率、成長率が低いこと)がなぜ続いているのかをずっと考えていました。
事業化の成否は技術や商品の良し悪しだけではなく、様々な要因があると思いますが、そもそも知的財産制度自体を知らない方(特許や商標という言葉は聞いたことがあっても、内容を知らない方)や、あるいは日々の資金繰りや営業活動に奔走するのに手一杯で知的財産と無縁の経営をしてきたという方が案外多く、折角生み出した知的財産をうまく保護・活用できていないのではないかと思い始めました。

なお、中小企業庁が2009年に発行した中小企業白書においても、特許を保有している企業(知的財産の保護に気を遣っている企業と言ってもよいかもしれません)は、そうでない企業に比べて従業員1人当たりの営業利益が高くなることが統計上、裏付けられています。
また、同白書には出願をしない理由も統計が取られていますが、中小企業はコスト負担が大きいことがネックになっています。
もちろん、出願をして権利を取得することが全てではなく、必要に応じて営業秘密(ノウハウ)として管理することも重要なのですが、ノウハウ管理を選択した場合でも第三者が同じノウハウについて権利を取得しまった場合への対応等、適切な手当をした上でノウハウ管理をされているのか、甚だ疑問です。

また、知財についての関心はあるのだが、特許事務所(弁理士)に相談すること自体に敷居の高さを感じている方も多くあるのではないかと思い始めました(すぐにお金の話をするのでは?依頼を前提としないと真剣に話を聞いてくれないのでは?素人がトンチンカンな話をすると怒られるのでは?)

そこで、気軽に、知財について日頃お考えになっていることや疑問を相談して頂き、知財制度を理解してどのような対応をすればよいかを知って頂く機会を設けるべきと思い、郷里の知財の啓蒙を図るべく無料相談会の開催をしている次第です。
また、中小企業白書の事実を知っていただき、和歌山の事業者様もさらに上のステージへと事業を進めて頂きたいという思いもあります。
従いまして、ボランティアとして実施していますので、弊所への仕事の依頼などを誘導するようなことは一切致しません(ご質問があった場合にも費用などの回答は極力しないようにしています。簡単な書類であれば書類作成の仕方も指導しています。)。
また、何度でも無料で相談対応をさせて頂いております(他にご予約の方がいない場合は時間の制限も設けず、対応させて頂いております。ただ、あまりにも長時間になる場合には次回の相談日に再度お越し頂くようにお願いすることがあり得ますが...)。

開所以来現在に至るまで、和歌山県全域や泉南地区にお住まいの方々のご相談に対応させて頂いている実績(のべ約230件)がありますので、是非お気軽に弊所無料相談会をご活用下さい。

「それってパクリじゃないですか?」第2回放送について

今回の新着情報もテレビドラマ「それってパクリじゃないですか?」に関するものになります。
このドラマに関する記事を毎回UPすることはしないつもりだったのですが、書いておきたいことがありましたので、今回(のみ?)UPしたいと思います。

第2回のテーマは「パッケージの類似」でした。また、サブテーマとして「パクリとパロディの違い(境界線)は?」というものもありました。

放送をご覧になった皆さんはどういう感想をお持ちでしょうか?
「ハッピーエンドになってよかった」、「分かり易かった」、「内容が難しかった」など色々な感想をお持ちかと思いますが、当職はあるセリフが印象に残りました。
それは、主演の芳根京子さん(藤崎亜季)が言った、「これは気持ちの問題なんです。」というセリフです。
上手い表現だと思いました。(因みに、重岡大毅さん(北脇弁理士)は「問題は、悪意の有無ではなく、配慮の有無です。」と言っていましたが、少しわかりにくいかなぁと思いました。)

そうなんです。我々、知財で飯を食っている者は、やれ「外観だ」、「称呼だ」、「取引の実情だ」、「審査基準だ」、「判例だ」など、色々理屈を並べて類否判断をしている(しているような気になっている?)のですが、実際のところ、類似しているのかしていないのか(パクリなのかパロディなのか)は、オリジナルの側の「気持ち」の問題なのです。
ドラマでも主人公の藤崎亜季が、パクリとパロディの違い(境界線)について考え続けていました。
ドラマでは、その境界線(判断基準)はこれだ!、みたいな明確な言及はありませんでしたが、その境界線(判断基準)は、正に「気持ちの問題」という言葉に集約されていると思います。
つまり、オリジナル側が「気持ち」として許せる(許容できる)のであれば明らかに類似していてもそれはパロディになりますし、オリジナル側が「気持ち」として許せない(許容できない)のであれば類似か否かが微妙であってもそれはパクリになってしまう、ということです。

その証拠とまでは言えないかもしれませんが、ドラマでは実際にあった「白い恋人(石屋製菓)」と「面白い恋人(吉本興業)」の係争事件が紹介されていました。
ドラマでは、単に和解が成立した、としか触れられていませんが、実際に両社間で約8年、裁判所で争った上でなされた和解内容(概要)は以下のようなものです。https://news.ntv.co.jp/category/society/223103

(1)吉本興業側はパッケージの図柄を変更する。
(2)吉本興業側は(1)のパッケージ内容で「面白い恋人」の販売を行うが、関西6府県でのみ販売を行い、それ以外の地域での販売は原則行わない(近畿以外の地域における物産展などでの販売は例外的に認められる)。
(3)賠償金は発生しない。

皆さんはこの和解内容についてどういう感想を持ちますか?
図案変更や販売地域の限定はありますが、吉本興業側は「面白い恋人」の販売を継続できるという結果を得ました。
石屋製菓側は、少なくとも自社の最大の商圏である北海道や東京では「面白い恋人」の販売を止めさせることはできました。
しかしながら、賠償金を勝ち取ることや「面白い恋人」自体を葬り去ることはできませんでした。
石屋製菓としては大満足という結果ではなかったと思いますが、8年もの時間をかけて争ったのは、どうしても許せないという、正に「気持ちの問題」だったんじゃないかと思います。

最後に、当職の感想だけでは新着情報になりませんので、少し解説をしたいと思います。

今回のような「パッケージ」に関して、類似しているのか・していないのかの判断(類否判断といいます)は、商標法からのアプローチと不正競争防止法(以下、不競法)からのアプローチがあります。

商標法からのアプローチとしては、まず、両者の「商標」と「商品(または役務)」を特定します。
具体的には、月夜野ドリンクが保有している商標権の内容は、商標が「緑のお茶屋さん」で、指定商品は恐らく「清涼飲料(お茶)」ではないかと思います。
一方、落合製菓が実施しているパッケージ内容は、ネーミングが「緑のおチアイさん」で、商品は「チョコレート」です。
まとめると以下のようになります。
 商標:「緑のお茶屋さん」vs「緑のおチアイさん」
 商品:「清涼飲料」vs「チョコレート」
次に、パクリ側の「商標」と「商品」が、オリジナル側が保有している商標権の「商標」と「商品」の範囲に属しているか否かを検討します。
この際、月夜野ドリンクの主張としては、以下のようなものが考えられます。
「緑のお茶屋さん」と「緑のおチアイさん」は、称呼(読み方)において「ミドリノオチャヤサン」と「ミドリノオチアイサン」であり、相違する箇所は「ャヤ」と「アイ」のみであり、10文字中8文字(80%)が一致しているので、商標として類似であるという主張。
「清涼飲料」と「チョコレート」は、需要者の範囲が一致している(商標審査基準)など、取引の実情から総合的に判断すると類似する関係にあるという主張。
従って、「緑のおチアイさん」は、「緑のお茶屋さん」との間において「商標」と「商品」が類似する関係にあり、月夜野ドリンクの商標権を侵害しているという主張。
しかしながら、両者の「商標」と「商品」は、いずれも同一ではなく、あくまでも類似していると見ることもできるという程度です(非類似と見ることもできる)ので、月夜野ドリンクの主張が認められるのかは微妙だと思います。(最初、北脇弁理士が二の足を踏んでいたのはこのような理由があるからだと思います。)

不競法からのアプローチとしては、まず、両者のパッケージの内容を特定します。
ここで、不競法においては対象となるのは、両者の実際のパッケージ内容(デザイン)になります。(商標権の有無は関係ありません。)
そうすると、両者のデザインは似ていますよね。
しかしながら、不競法はそれだけでは権利侵害にはなりません。
不競法において権利侵害と認定されるためには、デザインが似ているだけではダメで、オリジナル側のデザインが需要者の間で広く認識されているもの(周知)でかつ両者が混同している(不競法2条1項1号)か、或いはオリジナル側のデザインが著名(『超』周知ということです)であること(不競法2条1項2号)が必要になります。
この点、ドラマでは「緑のお茶屋さん」は大ヒット商品という設定で、落合製菓は月夜野ドリンクのパッケージデザインの変更に追随して、意図的に「緑のおチアイさん」のパッケージデザインも変更しているという設定になっていました。
恐らく、制作者側としては、不競法2条1項1号(周知かつ混同)に該当するという方向に誘導したいのではないかと思われます。(北脇弁理士が自分でも調査をしてみると言っていたのは、これだったら勝算があると考えたのではないかと思います。)

なお、ドラマではOEM(Original Equipment Manufacturer:他者ブランドの受託製造)という解決策が提案され、ハッピーエンドになりました。
ドラマとしてはいいアイデアと思いますが、残念ながら、ビジネスの世界はそれほど甘くはないので、実務ではこのような落としどころはほとんどありません。(最後は、北脇弁理士みたいになってしまいました(笑))

GWの営業について

弊所は、開所以来、GW・お盆・年末年始を問わず、特許庁が開庁している日は営業することにしております。
従いまして、GW期間につきましても以下のスケジュールで営業・稼働しておりますのでよろしくお願い申し上げます。

~4月28日(金)        :通常営業
4月29日(土)、4月30日(日):休日・祝日
5月1日(月)、5月2日(火)  :通常営業
5月3日(水)~5月7日(金)  :休日・祝日
5月8日(月)~         :通常営業

弁理士が登場するテレビドラマ

今回の新着情報は、テレビドラマについてです。

4月12日(水)から読売テレビ(日本テレビ系列)で「それってパクリじゃないですか」というテレビドラマが始まりました。
今まで、下町ロケットなど、知的財産権(特許権が主です)が重要な要素となるドラマはいくつかありましたが、登場するのは弁護士のみで、知的財産権に直接携わる「弁理士」が登場するドラマはありませんでした。
少し調べてみたところでも、士業が登場するドラマは、弁護士は数多く、その他の士業も税理士(TBS:税理士楠銀平の事件帳簿)、行政書士(フジテレビ:カバチタレ)、公認会計士(NHK:監査法人)、司法書士(地方局:奮闘!びったれ)などがありましたが、やはり弁理士が登場するドラマは発見できませんでした。
そんな中、今回、弁理士がしかも主役(?)で登場するドラマが始まりました。画期的なことだと思います。

第一回の感想ですが、知財の要素をうまく散りばめながら、ジャニーズWESTの重岡大毅さん演じる「北脇弁理士」の活躍(?)もあって、芳根京子さん演じる「藤崎亜季」の無実を証明しつつハッピーエンドになるという、楽に見ることができるドラマになっていました。
また、監修に入っておられる西野弁理士は、弁理士が通常行っている出願~権利取得の実務はもとより、ライセンス交渉や知財訴訟も数多く経験しておられる方なので、知財面からの裏付けも誤りがなく、正確に描けていると思いました。
尤も、最後の社長のオチはドラマだなぁと思いましたが・・・(テレビに向かって、そんなアホなって思わずツッコんでしまいました(笑))

さて、前置きが長くなりましたが、第一回のテーマは「冒認出願」と、それに伴う「権利移転請求」という事案でした。
少し解説をしますと、「冒認出願」は、完成した他人の発明を無断で(盗んで)自分の発明として出願した出願のことを言います。
本来、このような出願は特許庁の審査において拒絶されるべきものなのですが、特許庁は出願書類に記載されている発明者が真の発明者であるか否かを確認する手段がありません。
なので、冒認出願に係る発明が既に公知の技術でない限り、「冒認出願」にも特許権が付与されること(謂わば「冒認特許」)になります。
そして、この「冒認出願」、「冒認特許」の内容は公報として発行されることになります。(この点が非常に重要なポイントになります。ドラマでも「特許公報」が映し出されるカットがありましたよね。)
一方、真の発明者は、盗まれた自分の発明を正式に自分の出願として出願を行い、権利化したいところです。
ところが、盗まれた自分の発明の内容は、既に「冒認出願」、「冒認特許」の公報として公表されてしまっていますので、真の発明者の出願は「冒認出願」、「冒認特許」の公報と同じ内容(発明)であるとして拒絶されることになります。
従って、以前は、真の発明者は自分の権利として権利化をすることができず、権利が付与された「冒認特許」に対して無効審判を請求して権利を消滅させることしかできませんでした。
このように、以前は、真の発明者は泣き寝入りするしかなかったのです。

しかし、最高裁判所によって、このような冒認出願が特許になった場合、真の発明者は冒認出願であることを証明すれば権利を自分のところに移転させることができる(自分の手に取り戻すことができる)、との判決がなされました(平成9年(オ)1918号:平成13年6月12日判決・民集55巻4号793頁)。
そして、この最高裁の判決を受けて、平成23年に特許法の改正が行われ「冒認出願に伴う権利移転請求」が、特許法第74条として規定され、認められることになりました。

なお、この「冒認出願に伴う権利移転請求」は、制度としては存在するのですが、実務としてはほとんどなされることはありません。
恐らく、9割近くの弁理士はやったことがない手続だと思います。(当職も約16年弁理士をやっていますが、一度も経験したことがありません。)
冒認された側としては、冒認をされた(技術が盗まれた)こと自体を世間に明らかにしたくないですし、ドラマのように両者間で権利譲渡を行うなど内々で解決したり、或いは回避手段を考えるのが通常だからです。(ドラマでも、月夜野ドリンクの開発者たちがハッピースマイル社の「冒認特許」を回避する手段を考えていましたよね。)
以上が解説になります。

第一回は非常にレアなケースを題材にしていましたが、予告によると第二回はパッケージの類似という、実務でもよくある事案がテーマのようですので楽しみです。

無料相談会のマスク着用について

弊所では、毎月第二、第四日曜日にボランティアの無料相談会を開催しておりますが、新型コロナウイルスの感染防止のため、2020年から、ご来所頂く相談者の皆様にマスクの着用と手洗いの実施をお願いしておりました。
今般、全国的にマスク着用ルールが緩和されることになりましたので、弊所無料相談会においてもマスク着用のお願いは終了させて頂きます

一方、ご来所時の手洗いにつきましては当分の間継続させて頂きますので、ご理解の程よろしくお願い申し上げます。(https://www.okapatent.com/contact.html

次回の無料相談会(3月26日:3月第四日曜日)から実施させて頂きますので、よろしくお願い致します。

商標出願の活用法(敢えて拒絶査定を受けるために商標出願を行うという活用法)

今回の新着情報は、商標出願の別の活用方法についてです。
商標出願を行う一番の目的は言うまでもなく商標権を取得するためですが、商標出願には、商標権が取得できないものであることを確認するために敢えて商標出願を行うという活用法もあります。
今回はその活用法について解説したいと思います。

商標権を取得するためには特許庁(審査官)の審査を通過する必要がありますが、商標法には商標登録を受けることができない条件が列記されています。
これを登録要件と言い、審査官は出願された商標がこの列記されている登録要件(チェック項目)に該当する否かを審査します。
そして、出願された商標が列記されている登録要件の中の1つにでも該当する場合には出願を拒絶をし、該当するものが全くない場合には登録査定を行います。

この登録要件は商標法の第3条(一般的登録要件)と第4条(具体的登録要件)に規定されており、その中でも第3条に規定されている「一般的登録要件」と言われるものの概要は以下の内容となっています(特許庁HPから抜粋)。

i) 商品又は役務の普通名称のみを表示する商標(商標法第3条第1項第1号)
ii) 商品・役務について慣用されている商標(商標法第3条第1項第2号)
iii) 単に商品の産地、販売地、品質等又は役務の提供の場所、質等のみを表示する商標(商標法第3条第1項第3号)
iv) ありふれた氏又は名称のみを表示する商標(商標法第3条第1項第4号)
v) 極めて簡単で、かつ、ありふれた標章のみからなる商標(商標法第3条第1項第5号)
vi) その他何人かの業務に係る商品又は役務であるかを認識することができない商標(商標法第3条第1項第6号)

重要な箇所を赤字表示していますが、要するに、そもそも商標としての識別力がないもの(出願)は登録を認めない、ということです。
その理由は、商標としての識別力がないものについて、一個人に独占権(商標権)を与えてしまうと弊害が大きいからです。
例えば、商品「みかん」に対して、「みかん(1号の普通名称)」の商標の使用を一個人にのみ認めてしまうと、社会が混乱してしまいます。
なので、そのような出願は登録を認めない、ということです。

従って、3条に基づいて出願が拒絶された場合には、独占権(商標権)は取得できないことになります。
しかしながら、ここで重要な点は、3条に基づいて出願が拒絶された場合には、独占権(商標権)は取得できないだけであって、商標の使用自体が禁止されるものではないという点です。
つまり、3条に基づいて出願が拒絶された場合には、出願に係る商標は全ての人が使用できるものであるということになります。
言い換えれば、商標法第3条の規定は、一個人が独占的に使用することができないものであることを特許庁(日本国)が認定してくれる(お墨付きを与えてくれる)ものである、ということができます。

そこで、この条文の構造(意味)を利用して、対象としている商標(ネーミング)がそもそも商標としての識別力がないものであることを確認するために商標出願を行うという活用法があります。
例えば、「和歌山みりん」や「紀州ホテル」などは、1号の普通名称(みりん、ホテル)と3号の記述的商標(和歌山、紀州)の組み合わせであることから、明らかに3条の要件に該当するものとして拒絶されることになります。
しかしながら、識別力があるのかないのかが微妙な商標(ネーミング)の場合には、特定の個人が商標権として権利を取得してしまうのではないかという心配があります。
そこで、このような微妙な商標(ネーミング)について、3条で拒絶されたという記録(お墨付き)を作るために、商標出願を行うことがあります。
多くの場合、地方公共団体、商工会議所、商工会などの公的な団体がこのような商標出願を行い、敢えて拒絶査定を受けることによって、誰でも使用していいですよ、というアナウンスをしています。
因みに、当職もこのようなアドバイスを行い、実際に商標出願を行って3条による拒絶査定を受けられて、目的を達成された団体がいくつかあります。

このように、商標法第3条の規定を活用した商標出願は公的な団体が行うことが多いのですが、今回、この活用法を一般企業でも実践された事例がありました。
昨年「ゆっくり茶番劇」事件でニュースになった、株式会社ドワンゴです。
「ゆっくり茶番劇」事件の内容についてはこのHPでも紹介しました(「ゆっくり茶番劇」事件について思うこと)が、今回、以下の3つの商標(ネーミング)について、敢えて3条で拒絶されることを目的とした商標出願が行われました。
 「ゆっくり実況(商願2022-058346号)」
 「ゆっくり解説(商願2022-058347号)」
 「ゆっくり劇場(商願2022-058348号)」
その結果、審査において、3つの出願はいずれも商標法第3条第1項第3号の記述的商標であるとの認定となり、拒絶査定を受けました。
つまり、3つの商標(ネーミング)は、一個人が独占することができないものであるという、特許庁(日本国)のお墨付きをもらったということになります。
株式会社ドワンゴは、この結果について、公式Twitterアカウント上にて発表を行い、広くアナウンスを行っておられます。(https://twitter.com/nico_nico_info/status/1626066367865815043

このように、商標出願においては、権利を取得する目的以外に特許庁(日本国)のお墨付きをもらうために敢えて拒絶査定を受ける目的で出願を行うことがあります。
他の出願(特許出願、実用新案登録出願、意匠登録出願)にはない、商標出願の特徴の1つです。

新年のご挨拶

謹んで新年のご祝詞を申し上げます。
旧年中は格別のお引立てを賜わり誠にありがとうございました。
お陰様で弊所は開所以来13度目の新年を迎えることができました。
これもクライアント様を始め、皆様のご高配のお蔭と衷心より厚く御礼申し上げます。
本年もご期待に沿えますよう一層精励致しますので、何卒倍旧のご愛顧を賜わりますようお願い申し上げます。

岡特許商標事務所 所長 弁理士 岡 健司

年末年始の営業について

弊所は、GW・お盆・年末年始を問わず、特許庁が開庁している日は営業することにしております。
従いまして、年末年始につきましても以下のスケジュールで営業・稼働しておりますのでよろしくお願い申し上げます。

~12月28日(水):通常営業
12月29日(木)~2023年1月3日(火):休み
1月4日(水)~  :通常営業